概要

本資料では、医療機器及び体外診断用医薬品の製造管理及び品質管理の基準に関する省令(QMS省令)のうち、「第66条〜第72条の3」に規定される追加的要求事項について解説します。
対象項目には、品質管理監督システムの追加要求事項、品質管理監督文書・記録の保管、 不具合等報告、 製造販売後安全管理との関係、医療機器等総括製造販売責任者及び国内品質業務運営責任者の業務、外国製造医療機器等の業務管理までが含まれ、製造販売後の品質確保、責任者体制整備、国内外における業務連携強化のための具体的な手順と記録管理が求められています。

医療機器等の製造管理及び品質管理に係る追加的要求事項(第65条~第72条の3)

第65条(経過措置)


この省令の施行の際、現に製造販売業者等が行っている業務その他の行為で、この省令の規定に適合しないものがある場合においては、厚生労働大臣が定める期間内に限り、なお従前の例によることができる。

適用事項の説明

本条は、QMS省令の改正施行時の「経過措置」 に関する規定です。
新たに改正された条文や新設された規定が直ちに全ての製造販売業者等に一律適用されるのではなく、施行日から一定期間内は「従前のルール」に基づいて業務を継続できる 旨を定めています。

主な適用対象

  • 既存の医療機器製造販売業者等
  • 既に構築済みの品質管理監督システム
  • 現行QMS文書類(手順書、記録書式など)

主な趣旨

  • 法改正の周知期間と業界の準備期間を確保
  • 業務上の混乱や製品供給停止を防止
  • 事業者が段階的に新制度へ移行することを可能にする

対象期間

  • 経過措置期間は 省令附則 や 厚生労働省告示 により 明確に示されます。
    • 「改正施行後 1年以内に移行完了」
    • 「既存設備は5年以内に新規格に適合」 等

保管・管理事項の観点

経過措置期間中においても、次の事項に留意して品質管理監督文書等を管理する必要があります。

  • 従前の手順・記録 が有効な期間を明確にし、適切に管理
  • 新旧両方の文書管理体系 を適切に区分し、混在を防止
  • 経過措置終了後は完全に新規基準へ移行 し、不要となる旧版文書は適切に廃止管理

保管すべき文書例(経過措置関連)

  • 経過措置期間中に適用していた 従前の手順書類
  • 経過措置適用期間を示す 内部通達や運用記録
  • 移行準備計画(新基準への 教育・訓練記録 を含む)
  • 新旧文書の 整合性確認記録

第65条(経過措置) は、QMS省令改正時における「移行期間」を定める条文であり、製造販売業者等が計画的かつ確実に新しい品質管理監督システムに対応できるよう配慮した規定です。附則や告示による具体的な移行スケジュールに従い、品質管理文書類の管理・更新を適切に行うことが求められます。

第66条(品質管理監督システムに係る追加的要求事項)

製造販売業者等は、第2章の規定のほか、第3章から第5章の2までの規定(第3条の規定により適用するものとされた規定に限る)に基づき、品質管理監督システムを確立し、文書化し、実施するとともに、その実効性を維持しなければなりません。

また、製造販売業者等は、工程について、第2章の規定のほか、第3章から第5章の2までの規定に基づき管理監督しなければなりません。

さらに、製造販売業者等は、品質管理監督文書に、第6条各号に掲げる事項のほか、第3章から第5章の2までに規定する手順及び記録を記載しなければなりません。

適用事項の説明

  1. 医療機器及び体外診断用医薬品の製造販売業者等(生物由来医療機器等の製造販売業者及び放射性体外診断用医薬品の製造販売業者等を除く)は、第2章及び第3章の規定に基づき、製品の製造管理及び品質管理を行わなければなりません。
  2. 生物由来医療機器等の製造販売業者等は、第2章及び第3章のほか、第4章に規定に基づき、製品の製造管理及び品質管理を行わなければなりません。
  3. 放射性体外診断用医薬品の製造販売業者等は、第2章及び第3章のほか、第5章の規定に基づき、製品の製造管理及び品質管理を行わなければなりません。
  4. 再製造単回使用医療機器の製造販売業者等は、第2章及び第3章の規定のほか、第5章の2の規定に基づき、製品の製造管理及び品質管理を行わなければなりません。

第67条(品質管理監督文書の保管期限)

第8条第4項の規定により製造販売業者等が品質管理監督文書又はその写しを保管する期間は、当該品質管理監督文書の廃止の日から次の各号に掲げる期間(教育訓練に係るものにあっては5年間)とします。ただし、製品の製造又は試験検査に用いた品質管理監督文書については、次条に規定する期間、当該品質管理監督文書が利用できるように保管することで足ります。

  1. 特定保守管理医療機器に係る製品にあっては、15年間(当該製品の有効期間又は使用の期限に1年を加算した期間が15年より長い場合にあっては、当該有効期間に1年を加算した期間)
  2. 特定保守管理医療機器以外の医療機器等に係る製品にあっては、5年間(当該製品の有効期間に1年を加算した期間が5年より長い場合にあっては、当該有効期間に1年を加算した期間)

保管すべき品質管理監督文書の例

保管すべき品質管理監督文書には、以下のようなものが含まれます。

  1. 品質管理監督システムを文書化したもの
  2. 施設及び登録製造所に対し、製品に関して不具合等の事項を知った場合に製造販売業者等に通知させるための手順
  3. 国内品質業務運営責任者の業務を規定した文書
  4. 製造販売業者と関係する施設及び登録製造所との間の実施要領
  5. 修理業者からの通知の処理に関する手順
  6. 販売業者又は貸与業者における品質の確保に関する手順
  7. 中古の販売業者又は貸与業者からの通知の処理に関する手順

第68条(記録の保管期限)

製造販売業者等は、第9条第1項又はこの章に規定する記録を、作成の日から次の各号に掲げる期間(教育訓練に係るものにあっては5年間)保管しなければなりません。

  1. 特定保守管理医療機器に係る製品にあっては、15年間(当該製品の有効期間に1年を加算した期間が15年より長い場合にあっては、当該有効期間に1年を加算した期間)
  2. 特定保守管理医療機器以外の医療機器等に係る製品にあっては、5年間(当該製品の有効期間に1年を加算した期間が5年より長い場合にあっては、当該有効期間に1年を加算した期間)

保管すべき記録の例

この章に定める記録には、以下のようなものが含まれます。

  1. 製造販売業者、管理監督者その他の当該業務に関して責任を有する者に対し必要な意見を述べた文書の写し
  2. 国内に流通させる製品について、市場への出荷の決定をロットごとに行った結果及び出荷先等市場への出荷の記録
  3. 国内に流通する製品について、製造方法等の変更により製品の品質に重大な影響を与えるおそれがある場合に管理責任者及び医療機器等総括製造販売責任者に報告した文書
  4. 国内に流通する製品について、当該製品の品質等に関する情報を得たときに、管理責任者及び医療機器等総括製造販売責任者に対して報告した記録
  5. 国内に流通する製品の回収の内容を記載した記録及び当該記録を管理責任者及び医療機器等総括製造販売責任者に対して報告した記録
  6. 国内の品質管理業務の遂行のために必要があると認めたときに管理責任者及び医療機器等総括製造販売責任者に報告した文書
  7. 国内の品質管理業務の実施に当たり、必要に応じ、関係する登録製造所に係る製造業者又は医療機器等外国製造業者、販売業者、薬局開設者、病院及び診療所の開設者その他関係する者に対し実施した連絡又は指示の文書
  8. GVP省令第2条第2項に規定する安全確保措置に関する情報を、安全管理統括部門へ報告した文書
  9. 国内品質業務運営責任者があらかじめ指定した者が行った市場への出荷の可否の決定に関する記録及び当該記録を国内品質業務運営責任者に対して報告した文書

第69条(不具合等報告)

製造販売業者等は、全ての施設及び関連する登録製造所に対し、施行規則第228条の20第1項各号及び第2項各号に関連する不具合等に関する事項を知った場合において、当該事項をその製品に係る製造販売業者等に通知するための手順を文書化させ、適正に実施させることが求められています。

製造販売業者等は、全ての施設及び関連する登録製造所から当該手順に基づき報告があった場合には、第55条の3第1項の手順に基づき、適正に厚生労働大臣等に報告することが求められています。

第70条(製造販売後安全管理基準との関係)

製造販売業者等は、製品に係る医療機器等の製造販売後安全管理に関する業務を行う場合においては、この省令の規定のほか医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器及び再生医療等製品の製造販売後安全管理の基準に関する省令(平成16年厚生労働省令第135号。以下「製造販売後安全管理基準」という。)の規定に従わなければなりません。

例えば、第55条の3第1項の規定に従って行う厚生労働大臣への報告など、この省令に従って製品の製造販売後安全管理に関する業務を行う場合にあっては、GVP省令に基づき行わなければならないことが求められています。

第71条(医療機器等総括製造販売責任者の業務)

医療機器等総括製造販売責任者の業務

製造販売業者は、次の各号に掲げる業務を、法第23条の2の14第2項に規定する医療機器等総括製造販売責任者に行わせなければなりません。

  1. 製品の出荷の決定その他の製造管理及び品質管理に係る業務を統括し、これに責任を負うこと。
  2. 業務を公正かつ適正に行うために必要があると認めるときは、製造販売業者、管理監督者その他の当該業務に関して責任を有する者に対し文書により必要な意見を述べ、その写しを5年間保管すること。
  3. 次条第1項に規定する国内品質業務運営責任者を監督すること(次項の規定により医療機器等総括製造販売責任者が国内品質業務運営責任者を兼ねる場合を除く。)。
  4. 管理責任者及び次条第1項に規定する国内品質業務運営責任者(限定第三種医療機器製造販売業者にあっては、管理責任者を除く。)の意見を尊重すること。
  5. 製造管理又は品質管理に関係する部門と製造販売後安全管理基準第4条第1項に規定する安全管理統括部門との密接な連携を図らせること。

兼任に関する規定

医療機器等総括製造販売責任者は、管理監督者若しくは管理責任者又は次条第1項に規定する国内品質業務運営責任者を兼ねることができます。ただし、医療機器等総括製造販売責任者は、製造販売業の主たる機能を有する事務所で勤務することが求められ、それぞれの業務に支障が生じない限りにおいて、管理監督者、管理責任者及び国内品質業務運営責任者との間で2又は3以上の役職を兼務することができます。

第72条(国内品質業務運営責任者)

国内品質業務運営責任者の設置

製造販売業者は、この省令の規定に従って行う国内の製品の品質を管理する業務(品質管理業務)の責任者として、国内に所在する施設に、次に掲げる要件を満たす国内品質業務運営責任者を置かなければなりません。

  1. 製造販売業者における品質保証部門の責任者であること。
  2. 品質管理業務その他これに類する業務に3年以上従事した者であること。
  3. 国内の品質管理業務を適正かつ円滑に遂行しうる能力を有する者であること。
  4. 医療機器等の販売に係る部門に属する者でないことその他国内の品質管理業務の適正かつ円滑な遂行に支障を及ぼすおそれがない者であること。

国内品質業務運営責任者の業務

製造販売業者は、国内品質業務運営責任者に、この省令の規定に基づき作成された手順書等に基づき、次に掲げる業務を行わせなければなりません。

  1. 国内の品質管理業務を統括すること。
  2. 国内の品質管理業務が適正かつ円滑に行われていることを確認すること。
  3. 国内に流通させる製品について、市場への出荷の決定をロットごと(ロットを構成しない医療機器等にあっては、製造番号又は製造記号ごと)に行い、その結果及び出荷先等市場への出荷の記録を作成すること(次項の規定により市場への出荷の可否の決定をあらかじめ指定した者に行わせる場合にあっては、当該製品の市場への出荷の可否の決定の状況について適切に把握すること)。
  4. 国内に流通する製品について、当該製品の品質に影響を与えるおそれのある製造方法、試験検査方法等の変更がなされる場合にあっては、当該変更に係る情報を国内外から収集し、かつ、把握するとともに、当該変更が製品の品質に重大な影響を与えるおそれがある場合には、速やかに管理責任者(限定第三種医療機器製造販売業者の国内品質業務運営責任者にあっては、管理監督者。次号から第7号までにおいて同じ。)及び医療機器等総括製造販売責任者に対して文書により報告し、必要かつ適切な措置がとられるようにすること。
  5. 国内に流通する製品について、当該製品の品質等に関する情報(品質不良又はそのおそれに係る情報を含む。)を国内外から収集するとともに、当該情報を得たときは、速やかに管理責任者及び医療機器等総括製造販売責任者に対して文書により報告し、記録し、及び必要かつ適切な措置がとられるようにすること。
  6. 国内に流通する製品の回収を行う場合に、次に掲げる業務を行うこと。
    • 回収した医療機器等を区分して一定期間保管した後、適正に処理すること。
    • 回収の内容を記載した記録を作成し、管理責任者及び医療機器等総括製造販売責任者に対して文書により報告すること。
  7. 第4号から前号までに掲げるもののほか、国内の品質管理業務の遂行のために必要があると認めるときは、管理責任者及び医療機器等総括製造販売責任者に対して文書により報告すること。
  8. 国内の品質管理業務の実施に当たり、必要に応じ、関係する登録製造所に係る製造業者又は医療機器等外国製造業者、販売業者、薬局開設者、病院及び診療所の開設者その他関係者に対し、文書による連絡又は指示を行うこと。
  9. 製造販売後安全管理基準第2条第2項に規定する安全確保措置に関する情報を知ったときは、安全管理統括部門に遅滞なく文書で提供すること。

市場への出荷の可否の決定の委任

前項第3号に規定する市場への出荷の決定は、国内品質業務運営責任者があらかじめ指定した者(品質保証部門の者又は登録製造所の構成員であって、当該業務を適正かつ円滑に遂行しうる能力を有する者に限る)に行わせることができます。

前項の規定により市場への出荷の決定を行った者は、その結果及び出荷先等市場への出荷に関する記録を作成するとともに、国内品質業務運営責任者に対して文書により報告しなければなりません。

なお、国内品質業務運営責任者は、管理責任者を兼ねることができます。

第72条の2(その他の遵守事項)

情報収集の体制整備

製造販売業者は、前条第2項第4号及び第5号の規定による情報の収集が妨げられることのないよう、第55条の規定により行う業務との関係も踏まえ必要な体制を整備するとともに、関係する施設及び登録製造所との間で必要かつ十分な事項について取り決め、これを文書化しなければなりません。

医療機器の品質確保に関する手順の整備

製造販売業者は、次に掲げる事項に関する手順を文書化しなければなりません。

  1. 医療機器の修理業者からの通知の処理
  2. 医療機器の販売業者又は貸与業者における品質の確保
  3. 中古品の販売業者又は貸与業者からの通知の処理

第72条の3(選任外国製造医療機器等製造販売業者等の業務)

外国製造医療機器等特例承認取得者の業務委託

外国製造医療機器等特例承認取得者は、選任外国製造医療機器等製造販売業者に、この省令の規定により行う業務のうち、次に掲げる業務を行わせなければなりません。

  1. 第7条の規定により行う業務のうち、国内の業務に関するもの
  2. 第17条の規定により行う業務のうち、国内の業務に関するもの
  3. 第29条の規定により行う業務のうち、国内の業務に関するもの
  4. 第43条の規定により行う業務のうち、国内の業務に関するもの
  5. 第48条及び第49条の規定により行う業務のうち、国内の業務に関するもの
  6. 第55条及び第55条の2の規定により行う業務のうち、国内の業務に関するもの
  7. 第60条から第60条の4までの規定により行う業務のうち、国内の業務に関するもの
  8. 国内の製品に係る回収処理
  9. 国内の製品に係る製造販売後安全管理に関する業務
  10. 選任外国製造医療機器等製造販売業者として行う業務についての外国製造医療機器等特例承認取得者の管理監督者及び管理責任者その他の関係する者に対する必要な報告、情報の授受その他の当該業務を適切に行うために外国製造医療機器等特例承認取得者との必要な連携を図るための業務
  11. 選任外国製造医療機器等製造販売業者として行う業務に関する文書及び記録の管理

外国指定高度管理医療機器製造等事業者の業務委託

外国指定高度管理医療機器製造等事業者については、前項の規定を準用します。この場合において、「選任外国製造医療機器等製造販売業者」とあるのは、「選任外国指定高度管理医療機器等製造販売業者」と読み替えるものとします。

選任外国製造医療機器等製造販売業者等の遵守事項

選任外国製造医療機器等製造販売業者又は選任外国指定高度管理医療機器等製造販売業者については、第70条から前条まで(第72条第5項を除く)の規定を準用します。この場合においての読み替え規定が定められています。

まとめ

今回は医療機器及び体外診断用医薬品の製造管理及び品質管理の基準に関する省令を6つの記事に分けて、分かりやすく解説しました。

弊社では、QMS省令対応に関するご相談や文書作成支援、バリデーション方針の策定など、現場で直面する課題に応じたサポートを提供しています。新たにQMS体制を整備する事業者様や、運用面でお悩みのご担当者様は、ぜひお気軽にご相談ください

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