概要

令和2年8月31日、厚生労働省より医療機器及び体外診断用医薬品のリスク管理計画(医療機器等リスク管理計画)に関する重要な通知が発出されました。本通知は、医薬品医療機器等法の改正に伴い新たに施行される「医療機器等条件付き承認制度」に対応するもので、医療機器等の製造販売後の安全性確保をより強化することを目的としています。

従来の「革新的医療機器条件付早期承認制度」から新制度への移行に伴い、リスク管理計画の策定・提出・公表に関する詳細な取扱いが定められ、製造販売業者にとって重要な指針となっています。

1. 医療機器等条件付き承認制度の創設

1.1 制度の背景と目的

医薬品医療機器等法の改正により、法第23条の2の5第12項の規定に基づく条件付き承認制度が新設されました。この制度は、革新的な医療機器や体外診断用医薬品を患者により早期に提供することを目的としつつ、製造販売後の安全性確保を徹底する仕組みです。

本制度の対象となる製品については、GVP省令に定める医療機器等リスク管理計画の策定が義務付けられ、承認条件として製造販売後の調査や試験の実施が求められます。

1.2 従前制度との関係

平成29年7月31日付けで発出された「医療機器製造販売後リスク管理計画の策定について」に基づく従前の制度で策定された計画については、引き続き従前の取扱いが適用されます。新制度は、令和2年9月1日以降の新規申請分から適用されることになります。

2. リスク管理計画の作成と提出

2.1 計画書の作成要領

医療機器等リスク管理計画は、通知に添付された別紙様式により作成することが求められています。様式は医療機器用(別紙様式1)と体外診断用医薬品用(別紙様式2)に分かれており、それぞれの特性に応じた記載項目が設定されています。

計画書には以下の主要項目を記載する必要があります。

  • 品目の概要(承認情報、使用目的、使用方法等)
  • 安全性検討事項(重要な特定されたリスク、潜在的リスク、不足情報)
  • 有効性に関する検討事項
  • 安全性監視計画
  • リスク最小化計画
  • 実施体制

2.2 承認申請時の提出

医療機器等条件付き承認制度に該当する製品の承認申請時には、従来の「製造販売後調査等基本計画書」に代えて、医療機器等リスク管理計画の案を提出することになりました。この変更により、承認審査段階から製造販売後のリスク管理について総合的に評価されることになります。

2.3 販売開始前の本計画提出

承認取得後は、原則として販売開始予定時期の1か月前までに、正式な医療機器等リスク管理計画を独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)の審査業務部業務第二課に提出する必要があります。提出は正本1部、副本2部とし、直接持参または郵送により行います。

3. 製造販売後調査等の実施計画

3.1 実施計画書の作成

製造販売後調査等を実施する場合は、別途詳細な実施計画書の作成が必要です。実施計画書には以下の種類があり、それぞれ記載すべき事項が定められています。

使用成績調査実施計画書

  • 一般使用成績調査
  • 特定使用成績調査
  • 使用成績比較調査

製造販売後データベース調査実施計画書

  • 医療情報データベースを活用した調査

製造販売後臨床試験実施計画書

  • GCPに準拠した臨床試験

3.2 実施計画書の提出時期

実施計画書は、原則として調査または試験の開始予定時期の1か月前までに、医療機器等リスク管理計画の添付資料として提出します。体外診断用医薬品については、必要事項をまとめた資料を添付資料として提出することも可能です。

4. 計画の公表制度

4.1 公表の目的と対象

医療機器等リスク管理計画の公表は、医療現場への情報提供と透明性確保を目的としています。公表対象は以下の部分に限定されます。

  • 品目の概要及び変更履歴を含む表紙(提出者印影、担当者情報を除く)
  • 医療機器等リスク管理計画の概要(セクション1から5.3まで)

4.2 公表資料の作成要領

公表資料はテキストベースのPDFファイルとして作成し、コピープロテクトは施さないこととされています。複数の販売名がある場合は、それぞれの販売名が確認できるよう表題に明記します。

ファイル名は以下の形式で統一されます。

業者コード(9桁)- 承認番号(16桁)- RMP - 版数(2桁).pdf

4.3 PMDAウェブサイトへの掲載

製造販売業者は、PMDAからの連絡を受けた後、原則5営業日以内に公表資料を電子メールで提出します。提出された資料は速やかにPMDAウェブサイトに掲載され、医療従事者や一般の方々が閲覧できるようになります。

5. 計画の変更と更新

5.1 安全性の懸念が判明した場合

製造販売後に新たな安全性の懸念が判明した場合は、速やかにリスク管理計画を変更する必要があります。変更の時期や内容については、個別にPMDAに相談することが求められています。

5.2 変更時の提出要領

軽微な変更を除き、計画を変更する際は最新版をPMDAに提出します。提出時には以下を含める必要があります。

  • 変更履歴欄への変更概要の記載
  • 変更部分への下線表示
  • 新旧対照表等の詳細資料の添付

まとめ

令和2年8月31日に厚生労働省より発出された通知により、医療機器及び体外診断用医薬品のリスク管理計画(RMP)制度が明確化されました。本制度は、条件付き承認制度に対応し、革新的な医療機器を早期に提供しつつ、安全性確保を強化する重要な枠組みです。承認申請時から販売後まで一貫したリスク評価とリスク最小化活動が求められます。

実務上は、PMDAへのリスク管理計画書の提出・公表手続き、安全性監視の運用、変更時の新旧対照表作成など、複雑な手順が必要となります。特に初めてRMPに取り組む製造販売業者にとっては、計画の構成や提出要領の理解が課題となることも少なくありません。

弊社(一般社団法人薬事支援機構)では、リスク管理計画の策定支援、PMDA提出資料の整備、体制構築のコンサルティングなど、実務的なサポートを提供しています。自社での対応に不安がある方や、制度運用を効率化したい方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。

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