概要

本資料では、医療機器及び体外診断用医薬品の製造管理及び品質管理の基準に関する省令(QMS省令)のうち、「第54条〜第64条」に規定される測定、分析及び改善に関する要求事項について解説します。
対象項目には、内部監査、製品受領者の意見収集、苦情処理及び法定報告、工程及び製品の監視・測定、不適合製品の管理及び対応、データ分析、是正・予防措置の実施までが含まれ、品質管理システムの有効性評価と継続的な改善、ならびに法令順守とリスクマネジメントに基づく記録と手順管理が求められています。

6. 測定、分析及び改善(第54条~第64条)

6.1 測定、分析及び改善(第54条)

製造販売業者等(限定第三種医療機器製造販売業者を除く)は、次に掲げる業務に必要な監視、測定、分析及び改善に係る工程について、計画を策定し、実施しなければなりません。

  1. 製品(限定一般医療機器に係る製品を除く)の適合性を実証すること
  2. 品質管理監督システムの適合性を確保すること
  3. 品質管理監督システムの実効性を維持すること

また、監視等の方法(統計学的方法を含む)及び当該方法の適用範囲について規定しなければなりません。

6.2 製品受領者の意見(第55条)

製造販売業者等は、品質管理監督システムの実施状況の測定の一環として、自らが製品受領者要求事項に適合しているかどうかについての情報を収集及び監視しなければなりません。

また、製品実現及び改善工程に係る工程入力情報とするため、並びに製品要求事項の監視に活用するためのリスクマネジメントに係る工程入力情報とするため、製品受領者からの意見収集の仕組みに係る手順を文書化しなければなりません。

法第68条の2の6第1項の規定に基づき収集された情報等製品の出荷後において得る知見の照査を、前項の意見収集の仕組みの一部としなければなりません。

6.3 苦情処理(第55条の2)

製造販売業者等は、苦情を遅滞なく処理するために必要な手順(情報の入手及び記録、製品受領者からの情報が苦情であるかどうかの判断、苦情の調査、法に基づく報告の必要性の評価、苦情に係る製品に対する措置、修正又は是正措置の必要性の評価に関する要求事項及び実施に係る責任を含む)を文書化しなければなりません。

ある製品受領者の苦情について、調査を行わないこととする場合は、その理由を特定し、当該理由を文書化しなければなりません。

苦情の処理においてとった全ての修正及び是正措置を文書化しなければなりません。

6.4 厚生労働大臣等への報告(第55条の3)

製造販売業者等は、法第68条の10第1項及び法第68条の11の規定に基づく報告に係る手順を文書化しなければなりません。また、その記録を作成し、保管しなければなりません。

6.5 内部監査(第56条)

製造販売業者等は、品質管理監督システムが次に掲げる要件に適合しているかどうかを明確にするために、あらかじめ定めた間隔で内部監査を実施しなければなりません。

  1. 実施要領、法令の規定等及び当該品質管理監督システム(限定一般医療機器に係る製品にあっては、製品実現計画を除く)に係る要求事項に適合していること
  2. 効果的に実施され、かつ維持されていること

内部監査の計画、実施、記録、及び監査結果に関する責任並びにこれらの要求事項に係る手順を文書化しなければなりません。また、内部監査の対象となる工程及び領域の状態及び重要性並びに従前の監査の結果を考慮して、内部監査実施計画を策定しなければなりません。

内部監査員の選定及び内部監査の実施においては、客観性及び公平性を確保しなければなりません。内部監査員に自らの業務を内部監査させてはなりません。

内部監査及びその結果の記録を作成し、これを保管しなければなりません。内部監査された領域に責任を有する責任者に、発見された不適合及び当該不適合の原因を除去するために必要な全ての修正及び是正措置を遅滞なくとらせるとともに、当該修正及び是正措置の検証を行わせ、その結果を報告させなければなりません。

6.6 工程の監視及び測定(第57条)

製造販売業者等は、品質管理監督システムに係るそれぞれの工程を適切な方法で監視するとともに、当該工程の監視において定量的な評価を行う必要がある場合においては、測定しなければなりません。

工程が第14条第1項の計画に定めた結果を得ることができないことが判明した場合においては、製品(限定一般医療機器に係る製品を除く)の適合性を確保するために、修正及び是正措置をとらなければなりません。

6.7 製品の監視及び測定(第58条)

製造販売業者等は、製品が製品要求事項に適合していることを検証するために、製品の特性を監視し、かつ、測定しなければなりません。

製造販売業者等(限定第三種医療機器製造販売業者を除く)は、監視及び測定に係る実施要領並びに当該監視及び測定に係る手順書を定め、製品実現に係る工程の適切な段階において当該監視及び測定を実施しなければなりません。

出荷可否決定等基準への適合性の証拠となる記録等を作成し、これを保管しなければなりません。工程の次の段階に進むことの許可及び出荷の決定を行った者を特定する記録を作成し、これを保管しなければなりません。

実施要領及び手順書に従った監視及び測定が支障なく完了するまでは、工程の次の段階に進むことの許可、出荷の決定及びサービスの提供を行ってはなりません。

6.8 植込医療機器固有の要求事項(第59条)

製造販売業者等(限定第三種医療機器製造販売業者を除く)は、植込医療機器に係る製品について、当該製品に係る全ての試験又は検査業務を行った構成員を特定する記録を作成しなければなりません。

6.9 不適合製品の管理(第60条)

製造販売業者等は、製品要求事項に適合しない製品について、意図に反した使用若しくは操作又は出荷を防ぐことを確実にするため、これを識別し、管理しなければなりません。

不適合製品の識別、不適合情報の文書、不適合製品の隔離並びに不適合製品の評価及び措置に係る管理並びにそれに関連する責任及び権限について手順を文書化しなければなりません。

不適合製品の管理においてとった全ての措置の記録を作成し、これを保管しなければなりません。

6.10 出荷前の不適合製品に対する措置(第60条の2)

製造販売業者等は、次に掲げる方法のうちいずれか一以上のものにより、不適合製品を処理しなければなりません。

  1. 発見された不適合を除去するための措置をとること
  2. 本来の意図された使用又は操作ができないようにするための措置をとること
  3. 特別採用の下で、使用若しくは操作の許可、工程の次の段階に進むことの許可又は出荷の決定を行うこと

不適合製品について、法令の規定等に適合しない場合には、特別採用による不適合製品の処理を行ってはなりません。不適合製品の特別採用を行った場合においては、当該特別採用を許可した者を特定する記録を作成し、これを保管しなければなりません。

出荷前の不適合製品についてとった全ての措置の記録を作成し、これを保管しなければなりません。

6.11 出荷後の不適合製品の処理(第60条の3)

製造販売業者等は、製品受領者への製品の送達後又は当該製品に係る医療機器等について使用若しくは操作がなされた後に不適合製品を発見した場合においては、その不適合による影響又は起こり得る影響に対して適切な措置をとらなければなりません。

不適合製品に係る通知書の発行及び実施に係る手順を文書化するとともに、当該手順を随時実施できるものとしなければなりません。この記録を作成し、保管しなければなりません。

6.12 製造し直し(第60条の4)

製造販売業者等は、製品を製造し直すことが必要な場合には、製品に及ぼす悪影響を考慮して、製造し直すための手順書を定め、当該手順書に従って製造し直さなければなりません。この場合において、製造販売業者等は、当該手順書の発行に当たっては、通常の手順書と同様の承認手続を行わなければなりません。

製造し直した製品について、適用される判定基準及び法令の規定等への適合性を実証するための再検証を行わなければなりません。

製造し直した製品に係る記録を作成し、これを保管しなければなりません。

6.13 データの分析(第61条)

製造販売業者等は、品質管理監督システムが適切性、妥当性及び実効性のあるものであることを実証するために、適切なデータを明確にした上で、当該データの収集及び分析を行うための手順を文書化しなければなりません。

データの分析に当たっては、監視及び測定の結果から得られたデータ並びにその他関連情報源からのデータを用いなければなりません。データ分析により、次の事項に関する情報を得ることができます。

  1. 製品受領者の意見
  2. 製品要求事項への適合性
  3. 工程及び製品の特性及び傾向(改善を行う端緒となるものを含む)
  4. 購買物品等の供給者等
  5. 監査
  6. 附帯サービス業務の記録(附帯サービスの提供を行う製品の附帯サービス業務に限る)

データの分析の結果、品質管理監督システムが適切性、妥当性及び実効性のあるものであることを実証できなかった場合においては、当該分析の結果を改善のための工程入力情報として活用しなければなりません。

データの分析の結果に係る記録を作成し、これを保管しなければなりません。

6.14 改善(第62条)

製造販売業者等(限定第三種医療機器製造販売業者を除く)は、その品質方針、品質目標、監査の結果、市販後監視、データの分析、是正措置、予防措置及び管理監督者照査を通じて、医療機器等の意図した用途に応じた機能、性能及び安全性並びに継続的に品質管理監督システムの適切性、妥当性及び実効性を維持するために変更が必要な事項を全て明らかにするとともに、当該変更を実施しなければなりません。

6.15 是正措置(第63条)

製造販売業者等は、発見された不適合による影響に応じて、当該不適合の再発を防ぐために必要な全ての是正措置を遅滞なくとらなければなりません。

次に掲げる事項に関して必要な要求事項を定めた是正措置に係る手順を文書化しなければなりません。

  1. 不適合(製品受領者の苦情を含む)の照査
  2. 不適合の原因の特定
  3. 不適合が再発しないことを確保するための措置の必要性の評価
  4. 所要の是正措置に係る計画の策定、当該是正措置の内容の記録及び当該是正措置の実施
  5. 是正措置が法令の規定等への適合性又は医療機器等の意図した用途に応じた機能、性能及び安全性に及ぼす悪影響の検証
  6. 是正措置をとった場合には、その是正措置の実効性についての照査

是正措置に関し調査を行った場合においては、当該調査及び是正措置の結果に係る記録を作成し、これを保管しなければなりません。

6.16 予防措置(第64条)

製造販売業者等(限定第三種医療機器製造販売業者を除く)は、起こり得る問題の影響に照らし、当該問題の発生を防止するために適切な予防措置を明確にし、とらなければなりません。

次に掲げる事項に関して必要な要求事項を定めた予防措置に係る手順を文書化しなければなりません。

  1. 起こり得る不適合及びその原因の特定
  2. 予防措置の必要性の評価
  3. 所要の予防措置に係る計画の策定、当該予防措置の内容の記録及び当該予防措置の実施
  4. 予防措置が法令の規定等への適合性又は医療機器等の意図した用途に応じた機能、性能及び安全性に及ぼす悪影響の検証
  5. 予防措置をとった場合には、その予防措置の実効性についての照査

予防措置に関し調査を行った場合においては、当該調査及び予防措置の結果に係る記録を作成し、これを保管しなければなりません。

次回解説内容

次回の記事では、医療機器等の製造管理及び品質管理に係る追加的要求事項(第65条~第72条の3)について解説します。

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