概要
医療機器及び体外診断用医薬品の製造管理及び品質管理の基準(QMS省令)は、医療機器の品質マネジメントシステムの国際規格であるISO13485:2016と整合を図ることを目的として改正されました。この文書では、QMS省令の第1条から第9条までの内容を解説します。この省令は医療機器等の製造管理及び品質管理の方法を定めており、製品の品質、有効性、安全性を確保するための要件を規定しています。
1. 総則(第1条~第3条)
1.1 趣旨(第1条)
QMS省令は、医薬品医療機器等法第23条の2の5第2項第4号及び第80条第2項に基づき、医療機器と体外診断用医薬品の製造管理及び品質管理の基準を定めています。この省令により、製造販売業者等は製品の品質を確保するための体制を整備する必要があります。
1.2 定義(第2条)
本省令では多くの用語が定義されていますが、特に重要なものとして以下があります。
- 「製造販売業者等」:医療機器等の製造販売業者、外国製造医療機器等特例承認取得者または外国指定高度管理医療機器製造等事業者を指します。
- 「製品」:構成部品等からなり、製造所の製造工程を経た物または医療機器プログラムを指します。
- 「構成部品等」:製造工程において使用される部品、組立品、原料、材料、容器、被包、表示物等であって、製品の一部となるもの及び製品のソフトウェアを指します。
- 「ロット」:一の製造期間内に一連の製造工程により均質性を有するように製造された製品、製造用物質及び構成部品等の一群を指します。
- 「施設」:品質管理監督システムに含まれる製品実現に係る施設(製造所を含む)を指します。
- 「バリデーション」:施設の構造設備並びに手順、工程その他の製造管理及び品質管理の方法が期待される結果を与えることを検証し、これを文書とすることを指します。
- 「管理監督者」:製造販売業者等の品質管理監督システムに係る業務を最上位で管理監督する役員等を指します。
- 「品質方針」:製品の品質を確保するために管理監督者が定め、表明する基本的な方針を指します。
- 「品質管理監督システム」:製造販売業者等が品質に関して管理監督を行うためのシステムを指します。
- 「植込医療機器」:人の身体内に埋設される若しくは人の身体の自然開口部に挿入される医療機器又は人の皮膚若しくは眼の表面を代替する医療機器であって、その全部又は一部が三十日以上留置されることを目的として使用されるものを指します。
- 「市販後監視」:医療機器等の製造販売から得られた情報の収集及び分析に係る体系的な業務を指します。
- 「購買物品等」:製造販売業者等が他から提供される中間製品、構成部品等及び製造に用いる物質並びにサービスを指します。
- 「使用性」:製品に係る医療機器等の特性のうち、使用者による安全かつ適正な使用又は操作のために必要であって、意図した用途に応じた機能、性能及び安全性が十分に発揮され、かつ、使用者の要求を充足させるために必要な性質を指します。
1.3 適用の範囲(第3条)
製造販売業者等は以下の規定に基づき、製品の製造管理及び品質管理を行う必要があります。
- 基本的要求事項(第2章)と追加的要求事項(第3章)
- 生物由来医療機器等については、第4章の規定も適用
- 放射性体外診断用医薬品については、第5章の規定も適用
- 再製造単回使用医療機器については、第5章の2の規定も適用
2. 品質管理監督システムに係る基本的要求事項(第4条~第9条)
2.1 適用(第4条)
法定承認または認証を要さない医療機器等に係る製品については、一部の条項(第30条から第36条の2まで)が適用されません。また、医療機器等の特性により適用できない規定がある場合は、品質管理監督システム基準書にその旨と理由を記載することで、その規定を適用しないことができます。
2.2 品質管理監督システムに係る要求事項(第5条)
製造販売業者等は、品質管理監督システムを文書化するとともに、その実効性を維持しなければなりません。また、省令で文書化することを求められている全ての要求事項、手順、活動及び実施要領を確立し、実施し、維持しなければなりません。
製造販売業者等は、法による製造販売業の許可、製造業の登録、医療機器等外国製造業者の登録、販売業の許可などを受けた場合はどれに該当するかを品質管理監督文書に記載する必要があります。
2.3 品質管理監督システムの確立(第5条の2)
製造販売業者等は、以下の事項を明確にして品質管理監督システムを確立しなければなりません。
- 品質管理監督システムに必要な工程の内容並びに当該工程における各施設及びその各部門の関与の態様
- 製品に係る医療機器等の機能、性能及び安全性に係るリスク並びに当該リスクに応じた管理の程度
- 工程の順序及び相互の関係
2.4 品質管理監督システムの業務(第5条の3)
製造販売業者等は、工程のそれぞれについて、判定基準及び方法の設定、工程実施に必要な資源及び情報の利用確保、工程によって達成される結果を得るための措置、監視・測定・分析などの業務を行わなければなりません。
2.5 品質管理監督システムの管理監督(第5条の4)
製造販売業者等は、工程を変更しようとするときは、品質管理監督システムへの影響、製品に係る医療機器等への影響、必要となる申請・届出などの手続を確認しなければなりません。
2.6 外部委託(第5条の5)
製品要求事項への適合性に影響を及ぼす工程を外部委託する場合、製造販売業者等は当該工程が受託事業者により管理されるようにし、製品に関連するリスク及び受託事業者の能力に応じた方法により工程を管理しなければなりません。また、工程の管理方法について受託事業者と合意した内容を品質に関する実施要領に定める必要があります。
2.7 ソフトウェアの使用(第5条の6)
品質管理監督システムにソフトウェアを使用する場合、製造販売業者等はソフトウェアの適用に係るバリデーションについて手順を文書化しなければなりません。ソフトウェアを初めて使用するとき及び変更するときは、あらかじめバリデーションを行い、品質管理監督システムへのソフトウェアの使用に伴うリスクに応じてバリデーションを行う必要があります。
2.8 品質管理監督システムの文書化(第6条~第7条の2)
品質管理監督文書には、品質方針及び品質目標、品質管理監督システムの基準、手順及び記録、実効性のある計画的な実施及び管理のために必要な事項(記録を含む)などを記載しなければなりません。
品質管理監督システム基準書には、品質管理監督システムの範囲、手順書の内容や参照情報、各工程の相互の関係などを記載する必要があります。また、限定第三種医療機器製造販売業者を除く製造販売業者等は、品質管理監督文書の体系の概要も記載しなければなりません。
製品又は類似製品グループごとに、品質管理監督システムに係る要求事項を記載した製品標準書を作成し、保管する必要があります。
2.9 品質管理監督文書の管理・記録の管理(第8条~第9条)
品質管理監督文書は、発行前の妥当性確認と承認、更新時の確認と承認、変更内容と最新改訂状況の識別、改訂版の利用可能化、読みやすさと内容把握の容易さの確保、外部作成文書の識別と配付管理、文書の劣化・紛失防止、廃止文書の誤使用防止などの管理が必要です。
記録は、要求事項への適合及び品質管理監督システムの実効性を実証するために必要なものを作成し、保管しなければなりません。また、識別、保管、セキュリティ確保、完全性の確保、検索、保管期間、廃棄などについての管理方法を手順書に記載する必要があります。個人情報を適正に管理するための方法も定め、それに従って管理することが求められます。
次回解説内容
次回の記事では、管理監督者の責任(第10条~第20条)について解説します。
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