概要

令和7年7月4日、厚生労働省医薬局監視指導・麻薬対策課より、医療機器の適正広告に関する重要な事務連絡が発出されました。本通知では、弾性ストッキング、間欠泌尿器用カテーテル、アルコール依存症治療補助プログラムの3品目について、それぞれの適正広告ガイドラインが一般社団法人日本医療機器テクノロジー協会および一般社団法人日本医療ベンチャー協会から提出されたことが報告されています。

これらのガイドラインは、医家向け医療機器の一般消費者向け広告を適正に行うための指針として作成されました。医療機器の広告規制については、従来、一般消費者への直接的な情報提供が制限されていましたが、今回対象となった品目については、適切なガイドラインに基づいた広告が可能となります。

1. 背景と経緯

1.1 規制改革実施計画に基づく取り組み

厚生労働省は、規制改革実施計画に基づき、医療機器情報に対する一般消費者のアクセスを円滑化するための取り組みを進めてきました。患者や産業界のニーズを踏まえ、以下の品目が選定されました。

  • 発作時心臓活動記録装置
  • 発作時心臓活動記録装置用プログラム
  • 高血圧症治療補助プログラム
  • 禁煙治療補助システム
  • 弾性ストッキング
  • 間欠泌尿器用カテーテル
  • アルコール依存症治療補助プログラム

これらの品目について、ガイドラインを作成した上で、医家向け医療機器のインターネット上の出品(広告)を可能とすることが決定されました。

1.2 従来の広告規制の課題

医家向け医療機器は、医薬関係者以外の一般人向け広告を行うことは差し支えないと整理されているものが限定的でした。血圧計、コンタクトレンズ、体温計、AED、パルスオキシメータなど15品目に限られており、多くの医療機器については一般消費者への情報提供が困難な状況にありました。

2. 各ガイドラインの主要内容

2.1 弾性ストッキングの適正広告・表示ガイドライン

弾性ストッキングは、下肢の静脈還流を促進し、むくみや静脈瘤の予防・治療に使用される医療機器です。ガイドラインでは以下の点が重要視されています。

主な規定事項

  • 名称は届出をした販売名又は一般的名称を使用すること
  • 「一般医療機器」であることを明記すること
  • 届出番号を明記すること
  • 効果性能等の表現は承認等を受けた範囲内に限定すること
  • 使用体験談等は原則として行わないこと(使用感・操作感の説明は可)
  • サイズや着圧に関する情報を付記すること
  • 医師の指導のもとに適正な製品を選択し使用する旨を記載すること

安全性に関する注意事項

  • 「安全です」「安心してお使いください」等の漠然とした表現は禁止
  • 副作用等の表現について、「不具合・副作用が少ない」等の表現は使用不可
  • 美容器具的用法(「美脚」「細く見える」等)の表現は認められない

2.2 間欠泌尿器用カテーテルの適正広告・表示ガイドライン

間欠泌尿器用カテーテルは、導尿、尿採取又は尿流動態検査のために使用される医療機器で、特に間欠自己導尿に使用されるものが含まれます。

主な規定事項

  • 導尿は医行為にあたるため、導尿に関する使用方法は一般消費者に広告してはならない
  • 尿路感染症が疑われる症状が出た場合には医療機関に連絡する旨を必ず記載
  • カテーテルの挿入が困難な場合には無理に挿入せず医療機関に問い合わせる旨を記載
  • 「管理医療機器」であることを明記すること
  • 承認等番号を識別できるよう明記すること

広告における制限事項

  • 臨床データや実験例等の例示は原則として行わない
  • 医師の診断もしくは治療によらなければ治癒が期待できない疾患について、医師の診断・治療なしに治癒できるかのような表現は禁止
  • テレビ、ラジオの子ども向け提供番組における広告については特に注意が必要

2.3 アルコール依存症治療補助プログラムの適正広告ガイドライン

アルコール依存症治療補助プログラムは、デジタル技術を活用した医療機器プログラム(SaMD)の一種です。

主な規定事項

  • 「管理医療機器」であることを明記すること
  • 「必ず医師の指導に従って正しく使うこと」又は同意の表現で明記
  • 「取扱説明書を必ず読むこと」又は同意の表現で明記
  • 承認番号等を必ず製品に明記すること

特許に関する特別な取り扱い

  • 特許に関する広告は原則禁止
  • ただし、特許権の侵害防止等特殊目的での広告は医療機器広告と分離して実施可能
  • アプリケーションストア等への説明記載に特許番号等を併記することは可能

3. 共通する重要事項

3.1 広告の該当性

すべてのガイドラインにおいて、「広告」は以下の3要件を満たすものと定義されています。

  1. 顧客を誘引する(顧客の購入意欲を昂進させる)意図が明確であること
  2. 特定医薬品等の商品名が明らかにされていること
  3. 一般人が認知できる状態であること

3.2 禁止される表現

最大級の表現

  • 「最高の効き目」「強力な」「比類なき安全性」等は認められない
  • 「売上No.1」等の販売量に関する表現も効果性能等の優秀性と誤認されるため不可

保証的表現

  • 「根治する」「全快する」「安全性は確認済み」等の確実性を保証する表現は禁止
  • 歴史的表現(「○○年の歴史」)を効果の保証に結びつけることは不可

誹謗広告

  • 他社製品を誹謗するような広告は禁止
  • 比較広告は自社製品同士の比較に限定

3.3 安全性確保のための措置

各ガイドラインは、一般消費者の安全な使用を最優先に考慮し、以下の点を共通して求めています。

  • 医師・医療従事者の指導の必要性を明記
  • 取扱説明書・添付文書の確認を促す表記
  • 使用上の注意事項の適切な表示
  • 過度な期待や誤解を招く表現の排除

4. 業界への影響と今後の展望

4.1 情報アクセスの改善

今回のガイドライン策定により、従来は医療関係者向けに限定されていた情報が、適切な形で一般消費者にも提供可能となります。これにより、患者や利用者が自身の治療に使用する医療機器について、より正確な情報を得られるようになることが期待されます。

4.2 適正使用の促進

各ガイドラインは、単に広告を可能にするだけでなく、医療機器の適正使用を促進することを重視しています。医師の指導の必要性や使用上の注意事項を明確に示すことで、自己判断による不適切な使用を防ぐ仕組みが組み込まれています。

4.3 業界の責任

製造販売業者や広告を行う事業者には、以下の責任が求められます。

  • 正確な情報の伝達
  • 品位ある広告の実施
  • 適正使用のための情報発信・啓発活動
  • 社内審査体制の確立

まとめ

本通知により、弾性ストッキング・間欠泌尿器用カテーテル・アルコール依存症治療補助プログラムの3品目について、適正広告ガイドラインが新たに示されました。これにより、一般消費者向けにも一定の条件下で広告が可能となる一方、表現内容や情報提供には厳格なルールが求められます。

製造販売業者や関連企業にとっては、広告戦略の見直しとともに、法令遵守とリスク管理の両立が必要不可欠です。

「ガイドラインに準拠した広告表現の作り方が分からない」「自社製品が広告対象になるのか知りたい」「広告審査体制を整えたい」といったお悩みがある企業様は、ぜひ弊社までご相談ください。

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