概要

令和3年8月18日、厚生労働省医薬・生活衛生局医療機器審査管理課から、医療機器の基本要件適合性チェックリストに関する重要な通知が発出されました。この通知は、医療機器の製造販売承認申請や認証申請において必要となる基本要件基準への適合性を説明する資料の作成方法について、製造販売業者が参照できる基本要件適合性チェックリストの取扱いを示したものです。

本通知は、令和3年厚生労働省告示第267号による基本要件基準の一部改正を受けて発出されました。基本要件基準は医薬品医療機器等法第41条第3項に基づく重要な基準であり、医療機器が満たすべき安全性と有効性の根幹をなす要求事項を定めています。改正後の基本要件基準に対応した新しいチェックリストが別添として示されており、製造販売業者は承認申請等の際にこれを活用することができます。

1. 基本要件基準改正の背景と通知の位置づけ

1.1 基本要件基準とは

基本要件基準は、医薬品医療機器等法第41条第3項の規定により厚生労働大臣が定める医療機器の基準であり、すべての医療機器が満たすべき基本的な安全性と有効性の要求事項を規定しています。医療機器の製造販売承認や認証を取得する際には、この基本要件基準への適合性を示すことが必須となっています。

基本要件基準は医療技術の進歩や国際的な規制調和の観点から定期的に見直されており、今回の改正もその一環として実施されました。改正により、医療機器の安全性確保のための要求事項がより明確化され、最新の技術動向を踏まえた内容に更新されています。

1.2 通知発出の目的

本通知は、基本要件基準の改正を受けて、製造販売業者が承認申請等を行う際の実務的な指針を提供することを目的としています。従来から基本要件適合性チェックリストは承認申請添付資料として使用されてきましたが、基準改正に伴い新しいチェックリストの様式が必要となりました。

厚生労働省は、製造販売業者が基本要件基準への適合性を適切に判断し、申請書類を作成できるよう、参考となるチェックリストを別添として示しています。これにより、申請手続きの円滑化と審査の効率化が期待されます。

2. チェックリスト活用に関する具体的な指示事項

2.1 従来の取扱いとの継続性

通知では、平成26年11月5日付け薬食機参発1105第5号で示された基本要件基準への適合性の考え方については、引き続き適用されることが明記されています。これは、基本要件基準の解釈や適合性判断の基本的な考え方に変更がないことを意味し、製造販売業者にとって重要な継続性を保証しています。

従来の考え方を維持することで、これまでの申請実務で蓄積された知見やノウハウを活かしながら、新しいチェックリストを使用できます。審査側と申請側の双方にとって、解釈の一貫性が保たれることは、予見可能性の確保という観点からも重要です。

2.2 承認申請と認証申請での使用方法

承認申請添付資料留意事項通知(平成27年1月20日付け薬食機参発0120第9号)および認証申請添付資料留意事項通知(平成27年2月10日付け薬食機参発0210第1号)において示される基本要件適合性チェックリストとして、別添のチェックリストを使用することができると定められています。

これは、クラスIII・IV医療機器の承認申請と、クラスII医療機器の認証申請の両方において、統一的なチェックリストを使用できることを意味します。申請の種類によらず、同じ様式で基本要件への適合性を説明できることは、製造販売業者の負担軽減につながります。

2.3 既存の承認基準・認証基準への対応

既に通知された承認基準および認証基準に係る基本要件適合性チェックリストについては、別添のチェックリストを参考に読み替えることとされています。これは、個別の医療機器カテゴリーごとに定められている既存の基準についても、新しいチェックリストの考え方を適用することを意味します。

読み替えの具体的な方法については各製造販売業者の判断に委ねられていますが、基本的には新しいチェックリストの構成や項目を参考にしながら、既存の基準特有の要求事項を適切に反映させることが求められます。

3. 一般医療機器における適用

3.1 一般医療機器への拡大適用

本通知の重要な特徴の一つは、一般医療機器(クラスI医療機器)における基本要件基準への適合性判断についても、別添のチェックリストを参考とすることができると明記された点です。一般医療機器は承認や認証を必要としませんが、基本要件基準への適合は必須要件です。

従来、一般医療機器については明確なチェックリストの様式が示されていませんでしたが、本通知により統一的な判断基準が示されました。これにより、製造販売業者は自己適合宣言を行う際の判断根拠をより明確に文書化できるようになります。

3.2 自己適合性確認の重要性

一般医療機器の製造販売業者は、市場に製品を出す前に自ら基本要件基準への適合性を確認する責任があります。チェックリストを活用することで、この確認作業を体系的かつ網羅的に実施できます。また、万一問題が発生した場合の説明責任を果たすための記録としても重要な役割を果たします。

チェックリストは単なる確認ツールではなく、設計開発段階から製造、品質管理に至るまでの各プロセスで基本要件を意識した活動を促す効果もあります。これにより、より安全で有効な医療機器の開発につながることが期待されます。

4. チェックリストの構成と使用方法

4.1 チェックリストの基本構成

別添として示されたチェックリストは、基本要件の各条項に対して「当該機器への適用・不適用」「適合の方法」「特定文書の確認」の3つの欄から構成されています。これにより、各要求事項に対して体系的に適合性を説明できる仕組みとなっています。

第一章の一般的要求事項から始まり、第二章の設計及び製造要求事項へと続く構成は、医療機器の安全性と有効性を包括的に評価するための論理的な流れとなっています。各条項は医療機器の種類や特性に応じて適用・不適用を判断する必要があります。

4.2 適合性説明の記載方法

「適合の方法」欄には、各基本要件に対してどのような手段や方法で適合性を確保しているかを具体的に記載します。これには、設計上の配慮、試験による検証、リスクマネジメントの実施など、様々なアプローチが含まれます。

「特定文書の確認」欄には、適合性を裏付ける具体的な文書名や規格番号を記載します。JIS規格、ISO規格、社内規格、試験成績書など、客観的な証拠となる文書を明記することで、審査の透明性と効率性が向上します。

4.3 不適用項目の取扱い

すべての基本要件がすべての医療機器に適用されるわけではありません。例えば、能動型医療機器に関する要求事項は非能動型機器には適用されません。不適用と判断した項目については、その理由を明確に示すことが重要です。

不適用の判断は医療機器の特性を十分に理解した上で行う必要があり、安易に不適用とすることは避けるべきです。境界的なケースについては、リスクベースアプローチに基づき、より安全側の判断をすることが推奨されます。

5. 実務上の留意点と今後の対応

5.1 移行期間と準備

通知では特定の移行期間は設けられていませんが、製造販売業者は速やかに新しいチェックリストへの対応を進める必要があります。既に申請準備を進めている案件については、個別に審査当局と相談することが推奨されます。

社内の品質マネジメントシステムや文書体系の見直しも必要になる可能性があります。特に、設計開発プロセスにおいて基本要件への適合性を確認する手順を、新しいチェックリストに合わせて更新することが重要です。

5.2 継続的な改善と情報収集

基本要件基準は今後も技術の進歩や規制の国際調和に応じて改正される可能性があります。製造販売業者は、厚生労働省や業界団体からの情報を継続的に収集し、最新の要求事項に対応できる体制を維持することが必要です。

また、チェックリストの使用経験を社内で蓄積し、より効率的で確実な適合性確認の方法を確立していくことも重要です。他社の事例や審査での指摘事項なども参考にしながら、継続的な改善を図ることが求められます。

まとめ

本通知「薬生機審発0818第1号」は、医療機器の基本要件基準改正に対応した新しい適合性チェックリストの取扱いを定めた重要な指針です。承認・認証申請に加え、一般医療機器の自己適合性確認にも活用できることが明確化され、製造販売業者の申請書類作成や審査対応の効率化に大きく貢献します。

特に、改正後の基本要件基準では、安全性・有効性に関する要求事項の明確化と国際整合性の向上が図られており、今後の申請実務において必須の理解事項となります。新チェックリストを適切に運用することで、企業は法令遵守だけでなく、品質マネジメント体制の強化にもつなげることが可能です。

貴社の製品が改正後の基本要件に適切に対応できているか確認したい場合や、申請用チェックリストの作成に不安がある場合は、ぜひ弊社(一般社団法人薬事支援機構)までご相談ください。経験豊富な薬事専門家が、貴社の製品特性に合わせた最適な適合性確認・文書整備支援を提供いたします。

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