概要

令和4年7月21日に最終改正された「医療機器の添付文書の記載要領(細則)について」は、医療機器の添付文書作成における詳細な指針を定めた重要な通知です。本通知は、平成26年10月2日付けで発出され、医療機器の安全性確保と適正使用を促進するため、添付文書の記載方法について具体的かつ詳細な規定を設けています。

この細則は、医療機器製造販売業者が添付文書を作成する際の実務的な指針となるもので、記載項目ごとの詳細な要求事項、特定生物由来製品や生物由来製品に関する特別な記載事項、そして記載上の一般的留意事項など、幅広い内容を網羅しています。医療現場での安全な使用を確保するため、分かりやすく、正確で、必要十分な情報提供を実現することを目的としています。

1. 記載上の一般的留意事項

1.1 添付文書の形式と一体化

添付文書のみでは情報提供が困難な医療機器については、取扱説明書の冒頭に添付文書を掲載し、一体化を図ることが認められています。ただし、この場合でも添付文書部分は本通知の記載要領に従う必要があります。

1.2 記載内容の統一性と視認性

既存の類似医療機器との記載内容の統一を図ることが求められています。また、製品のイラストや写真を活用し、文字サイズ、行間、字体などに配慮して視認性を確保することが重要です。記載すべき適切な情報がない場合は、項目名を含めて省略することも可能です。

1.3 承認内容との整合性

承認番号等、類別及び一般的名称等、販売名、使用目的又は効果、承認条件の各項目については、製造販売承認、認証、届出の内容を正確に記載する必要があります。警告から形状・構造及び原理等まで、使用方法等から保管方法及び有効期間等までの各項目も、承認・認証内容と同様の内容とすることが求められています。

1.4 様式・仕様の原則

医家向け医療機器の添付文書は、原則としてA4判(左綴じ代1.7cm確保)とすることが定められています。ただし、一般医療機器で包装が小さい場合や、管理医療機器で1日の使用量が多い製品については、特定の条件を満たす場合に限り、例外的にA4判以外の様式も認められています。

2. 各記載項目の詳細な要求事項

2.1 作成又は改訂年月

作成又は改訂の年月及び版数は、添付文書の左上隅に記載します。医療機器の使用に際し重要な影響を与える項目について改訂した場合は、改訂箇所を明確に示し、改訂履歴を適切に管理する必要があります。

2.2 承認番号等と分類情報

承認番号、認証番号又は届出番号は、原則として販売名の右方側に記載します。単回使用の医療機器については、「再使用禁止」の記載が必須となります。また、高度管理医療機器、管理医療機器、一般医療機器の別、特定保守管理医療機器等の分類情報も明記する必要があります。

2.3 警告・禁忌・禁止事項

警告は本文冒頭に、禁忌・禁止は警告に続けて記載します。これらの項目は、平成26年10月2日付け薬食安発1002第5号「医療機器の使用上の注意の記載要領について」に従って記載することが求められています。

2.4 使用方法等と使用上の注意

使用方法等は、承認又は認証を受けた内容を記載し、必要に応じて操作方法や使用手順を製品の写真やイラストで図示します。組み合わせて使用する医療機器がある場合は、その要求事項も記載する必要があります。使用上の注意は、重大な不具合又は事故を防止する観点から、適切に記載することが重要です。

2.5 保管方法及び有効期間等

保管方法、有効期間、耐用期間(又は使用期間)の小項目を立てて記載します。耐用期間は使用開始から使用できる期間を、使用期間は単回使用医療機器の推奨連続使用時間を示します。自己認証による記載の場合は、その旨を明記する必要があります。

3. 特定生物由来製品及び生物由来製品の特別な記載事項

3.1 感染症伝播リスクに関する注意

特定生物由来製品については、警告の前に段抜き枠囲いで感染症伝播のリスクに関する全般的な注意を記載することが義務付けられています。ヒト血液やヒト胎盤由来成分を含有する場合、原材料の採取時の問診、感染症検査、製造工程での不活化処理等の安全対策を講じていても、感染症伝播のリスクを完全に排除できないことを明記する必要があります。

3.2 原材料に関する詳細情報

形状・構造及び原理等の欄には、ヒトその他の生物に由来する成分の名称、原材料の名称及び使用部位等を記載します。ヒト血液を原材料とする場合は、採血国及び採血方法(献血又は非献血の別)も記載する必要があります。

3.3 患者への説明と記録保存

特定生物由来製品の使用上の注意欄には、重要な基本的注意として、患者への説明に関する記載が必要です。また、取扱い上の注意欄には、使用した患者の氏名、住所等を記録し、医療機関等で少なくとも20年間保存する必要がある旨を記載することが求められています。

4. 記載に関する具体的な技術的要求事項

4.1 専門用語と略語の使用

医学用語や専門用語等の略語を使用する場合は、初出時に正式名称と略称を併記し、その後の記述で略称を使用することができます。必要に応じて、添付文書の最後に解説用語一覧を付けることも推奨されています。

4.2 文字サイズと視認性

警告から製造販売業者及び製造業者の氏名又は名称までの各項目は、原則として8ポイント程度の活字を用い、見やすくするよう配慮することが求められています。項目名等主要な事項は、ゴシック体を用いるかフォントを大きくするなどの工夫が必要です。

4.3 引用文献と科学的根拠

形状・構造及び原理等、臨床成績、保管方法及び有効期間等の記載には、原則として科学的な裏付けのあるものや信憑性の高い文献等に基づく正確な記載が必要で、出典を明らかにすることが求められています。

4.4 改訂管理と履歴表示

医療機器の使用に際し重要な影響を与える項目について改訂した場合は、改訂箇所に印を付記し、アンダーラインを引くなどして判別しやすくする必要があります。改訂年月の記載は次々回改訂まで継続表示し、適切に履歴管理を行うことが重要です。

5. 実務上の留意点と今後の対応

5.1 既存製品との整合性確保

添付文書の作成にあたっては、既存の類似医療機器との記載内容の統一を図ることが重要です。これにより、医療従事者の理解を促進し、誤使用のリスクを低減することができます。

5.2 定期的な見直しと更新

医療機器の性能向上や新たな知見の蓄積に伴い、添付文書の内容も適時更新する必要があります。特に安全性に関わる情報については、速やかな改訂と周知が求められます。

5.3 電子化への対応

将来的な添付文書の電子化に向けて、記載内容の構造化やデータベース化を意識した作成が推奨されます。これにより、情報の検索性や更新の効率性が向上することが期待されます。

まとめ

医療機器の添付文書記載要領(細則)は、医療機器の安全かつ適正な使用を確保するための重要な指針です。本通知に従い、正確で分かりやすい添付文書を作成することは、医療機器製造販売業者の責務であり、医療の質と安全性の向上に直結します。
特に、特定生物由来製品や生物由来製品については、感染症伝播リスクに関する特別な配慮が必要であり、詳細な記載要求事項を遵守することが求められます。また、記載内容の統一性、視認性の確保、承認内容との整合性など、多岐にわたる要求事項を満たすことで、医療従事者への適切な情報提供が実現されます。
今後も医療技術の進歩や規制環境の変化に応じて、添付文書の記載要領も適時見直されることが予想されます。

当社では、医療機器添付文書の作成・改訂支援や規制対応に関するコンサルティングサービスを提供しております。記載方法や承認内容との整合性、電子化対応などでお困りの際は、ぜひお気軽にお問い合わせください

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