概要
令和7年7月22日付けで厚生労働省医薬局長より発出された「血管内視鏡承認基準の改正について」(医薬発0722第4号)は、血管内視鏡の承認基準について重要な改正を行いました。この改正は、日本産業規格(JIS T 1553)の改正に伴うもので、適用範囲にビデオ軟性血管鏡を追加するとともに、技術基準や基本要件適合性チェックリストの記載整備等を行っています。
本改正により、血管内視鏡の承認審査における技術的要求事項がより明確化され、製造販売業者にとって重要な変更点が含まれています。特に、ビデオ軟性血管鏡が新たに承認基準の対象となったことで、該当する製品の承認申請において新基準への適合が求められます。
1. 改正の背景と目的
1.1 改正の経緯
血管内視鏡承認基準は、平成21年11月20日付け薬食発1120第13号厚生労働省医薬食品局長通知により制定されました。今回の改正は、日本産業規格JIS T 1553が改正されたことを主な契機として実施されています。
1.2 技術基準の最新化
医療機器の技術進歩に対応し、最新の技術基準に基づいた承認審査を可能とするため、技術基準および基本要件適合性チェックリストの記載整備が行われました。これにより、承認審査の透明性と効率性の向上が図られています。
1.3 適用範囲の拡大
従来の軟性血管鏡、軟性動脈鏡に加えて、ビデオ軟性血管鏡が新たに承認基準の適用範囲に追加されました。これは近年の医療機器技術の発展に対応したものです。
2. 主要な改正内容
2.1 適用範囲の拡大
改正により、承認基準の適用範囲が以下のように拡大されました。
従来の適用範囲
- 軟性血管鏡
- 軟性動脈鏡
改正後の適用範囲
- 軟性血管鏡
- 軟性動脈鏡
- ビデオ軟性血管鏡(新規追加)
この追加により、ビデオ軟性血管鏡の承認申請においても統一された技術基準が適用されることになります。
2.2 技術基準の更新
JIS T 1553の改正に伴い、技術基準の内容が更新されました。主な更新点には以下があります。
- 光学的性能に関する要求事項の明確化
- 材料および生体適合性に関する基準の更新
- 電気的安全性に関する要求事項の改訂
- 滅菌およびバリデーション要求事項の整備
2.3 基本要件適合性チェックリストの改訂
基本要件への適合性を確認するためのチェックリストが改訂され、以下の改善が図られました。
- チェック項目の明確化
- 適合性判定基準の具体化
- 参照すべき規格の最新化
- 評価方法の標準化
3. 承認基準不適合品の取扱い
3.1 新規申請品への適用
本承認基準の「適用範囲」に該当する血管内視鏡であって、当該承認基準に適合しないものについては、「医療機器の製造販売承認申請について」(平成26年11月20日付け薬食発第1120第5号)における承認基準なし(承認基準不適合)の取扱いとなります。
3.2 審査への影響
承認基準不適合となった場合、個別審査が必要となり、以下の影響が予想されます。
- 審査期間の延長
- 追加の試験データ要求
- より詳細な技術文書の提出
- 専門協議の実施可能性
3.3 対応策の検討
製造販売業者は、承認基準不適合を避けるため、設計段階から新基準への適合性を十分に検討する必要があります。
4. 既承認品への影響と対応
4.1 既承認品の取扱い原則
既に承認基準に基づき承認を受けている血管内視鏡のうち、改正後の承認基準に適合しないものについては、承認基準に適合させるための承認事項の一部変更申請を別途行う必要はないものとされています。
4.2 今後の一部変更申請における注意点
ただし、既承認品に係る今後行われる承認事項の一部変更申請については、変更後の製品が本基準に適合しない場合には、承認基準なし(承認基準不適合)の取扱いとなることに留意が必要です。
4.3 実務上の対応
既承認品を保有する製造販売業者は、以下の対応を検討すべきです。
- 現行製品の新基準への適合性評価
- 将来の製品改良計画への新基準反映
- 一部変更申請時の適合性確保対策
- 必要に応じた製品仕様の見直し
5. 適用期日と経過措置
5.1 適用開始日
本基準は、本通知の発出日(令和7年7月22日)から適用されています。
5.2 経過措置
既に承認申請された品目に係る承認基準については、従前の例によることとされており、申請中の案件への遡及適用は行われません。
5.3 実務上のスケジュール
- 令和7年7月22日以降の新規申請:新基準適用
- 同日以前の申請案件:旧基準適用
- 既承認品の一部変更申請:変更内容により新基準適用
まとめ
今回の血管内視鏡承認基準の改正は、医療機器の技術進歩に対応し、承認審査の質の向上を図る重要な改正です。特に、ビデオ軟性血管鏡の承認基準への追加は、近年の内視鏡技術の発展を反映したものであり、業界にとって大きな意義があります。
製造販売業者においては、新基準への適合を確保するため、設計・開発段階から新基準を意識した製品開発を行うとともに、既存製品についても将来の一部変更申請時の対応を検討しておくことが重要です。また、承認基準不適合となることを避けるため、事前の適合性評価を十分に実施し、必要に応じて薬事戦略の見直しを行うことが推奨されます。
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