概要
平成31年2月1日に厚生労働省医薬・生活衛生局医療機器審査管理課長から発出された「医療機器及び体外診断用医薬品の承認申請等に関する質疑応答集(Q&A)について(その2)」は、医療機器の製造販売業務における実務上の重要な課題を明確化した通知です。
本通知は、既に製造販売を終了した医療機器本体から、単体で医療機器に該当する構成部品のみを補充等のために販売する場合の取扱いに焦点を当てています。具体的には、記載整備届による承認書の変更手続き、JIS規格等の改正時の対応、構成部品に関する変更手続きについて、3つの質疑応答形式で詳細な指針を示しています。
この通知により、医療機器製造販売業者は、製品の一部構成品のみを継続販売する際の適切な薬事手続きを理解し、コンプライアンスを確保することが可能となります。また、認証品目についても同様の取扱いが適用されることが明確にされ、業界全体での統一的な運用が図られています。
1. 製造販売終了後の構成部品取扱いに関する基本原則
1.1 記載整備届による対応の継続性
医療機器本体の製造販売を終了した後も、単体で医療機器に該当する構成部品のみを補充等のために販売するケースは実務上頻繁に発生します。Q1では、既に平成26年9月29日付けの通知により記載整備が完了している品目であっても、承認書の製造方法欄に「本体の製造販売は終了し、医療機器たる構成品の製造販売を行う旨」を記載した軽微変更届を提出することで対応可能であることが明確にされました。
この取扱いは、承認整理を行わずに済むため、事業者にとって効率的な手続きとなります。従前の記載をそのまま維持しながら、製造方法欄のみを適切に変更することで、継続的な構成部品の供給が可能となります。
1.2 認証品目への適用範囲
重要な点として、この取扱いは認証品目においても同様に適用されることが明示されています。承認品目と認証品目の区別なく、統一的な運用が可能となることで、業界全体での予見性と手続きの簡素化が実現されています。
認証品目の場合も、認証書の記載整備を通じて同様の対応が可能であり、登録認証機関との連携のもとで適切な手続きを進めることができます。
2. JIS規格等の改正時における対応指針
2.1 本体に係る規格改正の影響範囲
Q2では、医療機器本体の製造販売を終了し、構成部品のみを販売している場合において、当該医療機器本体に係る承認、認証基準又は適合性確認で適合が必須とされているJIS規格等が改正された際の対応について明確化されています。
基本的な考え方として、本体の製造販売が既に終了している場合、改正後のJIS規格等への適合性を確認する必要はないとされています。これは、本体そのものが市場に供給されないため、改正された規格の適用対象とはならないという合理的な判断に基づいています。
2.2 構成部品に対する規格適用の注意点
一方で、構成部品に対して直接適用されるJIS規格等が改正された場合は、その適合性を確認する必要があることが明記されています。これは、構成部品自体が医療機器として単体で機能し、患者の安全性に直接的な影響を与える可能性があるためです。
事業者は、構成部品に適用される規格と本体に適用される規格を明確に区別し、適切な規格管理を行うことが求められます。定期的な規格動向の確認と、必要に応じた適合性評価の実施が重要となります。
3. 構成部品に関する変更手続きの詳細
3.1 変更手続きの基本的な考え方
Q3では、医療機器本体の製造販売を終了し、構成部品のみを販売している場合において、これらの構成部品について承認書等の記載内容に変更が生じた場合の手続きについて規定されています。
構成部品であっても、それ自体が医療機器として機能する以上、品質、有効性、安全性に影響を与える変更については適切な薬事手続きが必要となります。変更の内容や程度に応じて、軽微変更届、一部変更承認申請、又はその他の適切な手続きを選択する必要があります。
3.2 参照すべき関連通知
具体的な変更手続きについては、複数の関連通知を参照することが指示されています。平成29年7月31日付けの「医療機器の一部変更に伴う軽微変更手続き等の取扱いについて」を始めとして、原材料の変更に関する通知やQ&Aなど、包括的な指針が提供されています。
これらの通知を適切に参照することで、変更の性質に応じた最適な手続きを選択し、適切なタイミングで申請を行うことが可能となります。特に原材料の変更については、安全性への影響が大きいため、詳細な評価と適切な手続きが求められます。
3.3 QMS適合性調査への配慮
構成部品の製造販売においては、定期のQMS適合性調査についても適切な対応が必要です。当該構成部品が管理医療機器又は高度管理医療機器の場合、該当する製品群区分と製造所欄に記載した登録製造所の組合せで調査申請を行う必要があります。
有効な基準適合証の交付を受けている場合はこの限りではありませんが、適切な品質管理体制の維持と継続的な改善が求められます。
4. 実務上の留意点と今後の展望
4.1 業界全体への影響
本通知は、医療機器業界における部品供給体制の維持と患者への継続的な医療提供に重要な役割を果たしています。製品のライフサイクル管理において、本体の製造販売終了後も必要な構成部品を適切に供給することは、既存の医療機器の保守・修理に不可欠です。
また、独立行政法人医薬品医療機器総合機構、各種業界団体、登録認証機関協議会への通知により、関係者間での統一的な理解と運用が促進されています。
4.2 今後の薬事制度運用への示唆
本通知で示された考え方は、医療機器の薬事制度における柔軟性と実用性のバランスを示す重要な事例となっています。技術の進歩と市場環境の変化に対応しながら、患者の安全性を確保するという薬事制度の基本的な目的を達成するための現実的なアプローチが示されています。
今後も同様の実務的な課題に対して、業界の実情を踏まえた適切な指針が提供されることが期待されます。特にデジタル化の進展やAI技術の医療機器への応用など、新たな技術領域における薬事制度の適用についても、本通知のような実用的な指針が求められるでしょう。
まとめ
平成31年2月1日付の「医療機器及び体外診断用医薬品の承認申請等に関する質疑応答集(Q&A)(その2)」は、製造販売終了後の構成部品の取扱いやJIS規格改正への対応、構成部品の変更手続きに関する実務的な指針を提供する重要な通知です。
本通知により、記載整備届による柔軟な対応、合理的な規格適用の範囲、実務に即した変更手続きが可能となり、業界全体のコンプライアンス向上と業務効率化が期待されます。
構成部品の薬事手続きや通知への具体的対応にお困りの方は、当法人が実務支援を行っております。承認書や認証書の整備、変更手続き、QMS対応に関するご相談も含めて、ぜひお気軽にお問い合わせください。